早いもので10月も残りわずかですね、深まる秋を肌に感じます。
今回は先月訪れた、京町家をリノベーションした建物をご紹介したいと思います。
場所は京都。
突然ですが、「ワコール」というと日本を代表するインナーウェアメーカーで、
京都にて創業し現在も京都に本社を置く企業。
この「ワコール」さんが、京都で次々と宿泊施設をオープンされているのをご存じですか?
その名は「京の温所(おんどころ)」 https://www.kyo-ondokoro.kyoto/
5棟目としてオープン前の「京の温所 西陣別邸」にて、設計を担当された「中村好文」先生が講師になり、
建物を案内していただくという贅沢な講座に参加しました。
因みにこの建物は、ミナペルホネンのデザイナー「皆川明」さんによってディレクションされています。
明治後期に建てられた築約95年の町家で、黄土色の土壁、虫籠窓が特徴の立派な外観です。
京町家の台所の特徴である「火袋」の構造をそのままに活かした天井の高いダイニングは、
天窓から自然光が降り注ぐ明るい空間。
通り庭を利用した土間は、玄関からダイニングそしてデッキを介し外庭へと抜けていきます。
京都の景観を印象づける京町家の「価値や特性」を活かしながらも、
現代の生活が共存する住空間としてリノベーションされているのはとても参考になります。
「皆川」さんがセレクトした家具や、ミナペルホネンの生地が和の空間を柔らかく彩ります。
アーチ型の天井が特徴の寝室、写真にはないですが中庭を望むヒバのお風呂など、
「もうひとつの日常」を感じられる仕掛けがいっぱいです。
最後に、「なぜワコールがこのようなことを?」って思いませんか?
住まい手が居なくなった京町家が、荒れ果て、減ってゆくのを危惧した社員さんによる提案で始まったそうです。
町家の所有者から「借り受け」という形で町家を預かってリノベーションを行い、
宿として10年から15年ほど稼働した後に、所有者の元へ返却する仕組み。
この仕組みに沢山の町家所有者が賛同されているそうです。
暮らすための町家を再生し、また暮らすための所有者の元へと帰る。
京都の将来を考えた地元企業ならではの想い…とても感銘を受けました。
こんな想いや仕組みが広がるといいのになぁ…